ミカンエキスのLDLコレステロール改善効果を確認

プレスリリース

LDLコレステロール改善効果を確認

ミカンエキスでメタボ予防証 ~第63回日本栄養・食糧学会にて発表~

温州みかんとβ-クリプトキサンチン

アークレイ株式会社は、β-クリプトキサンチンを高濃度に含むミカンエキス飲料(β-クリプトキサンチンとして1mg/日)をメタボリックシンドローム予備群の方が摂取することによって、LDLコレステロール、腹囲等を有意に低下させることを実証し、メタボリックシンドロームに対して予防効果が期待できることを見出しました。

研究の概要

アークレイは2006年6月より機能性素材事業に参入し、β-クリプトキサンチンア)(β-CRP)を高含有した食品原料である温州みかんエキス「クリプトベータTM(商品名)」について各種展示会などを通じて、情報提供を行っております。

このたび、「クリプトベータTM」を含有する3種の飲料(β-クリプトキサンチンとして1、3、6mg/日)を用いて、メタボリックシンドローム予備群(60名)に及ぼす影響について第63回日本栄養・食糧学会イ)(長崎)において発表を行いました。なお、本発表内容は同仁会クリニック、(独)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター 矢野昌充先生、京都大学大学院農学研究科 河田照雄教授、西野輔翼教授(立命館大学特別招聘教授、京都府立医科大学特任教授)との共同研究成果となります。

今回の発表では、前回ヒト試験(第62回日本栄養・食糧学会、2008)より低濃度の「クリプトベータTM」含有飲料(β-クリプトキサンチンとして1mg/日)を摂取することで、LDLコレステロールウ)、総コレステロール、腹囲、体重、BMI値が有意に減少することがわかりました。また、今回実施した3濃度で用量相関は認められませんでしたが、一括評価において特に、LDLコレステロールおよび腹囲が異常値群では有意に減少しました。以上のことから、「クリプトベータTM」はβ-クリプトキサンチンとして1mg/日という用量にて、メタボリックシンドロームや動脈硬化の予防および進展阻止に有用であることが示唆されました。

これまでの研究から、「β-クリプトキサンチン」について、アークレイではメタボリックシンドローム予防の観点から、作用機構の解明とともにヒト試験にてその有用性を見いだしてきました。そして、今回「クリプトベータTM」を含むミカンエキス飲料(β-クリプトキサンチンとして1mg/日)での有効性を確認しました。今後は、β-クリプトキサンチンを含む食品素材である「クリプトベータTM」により、人々の健康な生活づくりに貢献していきます。

β-クリプトキサンチンは肥満・糖尿病モデルマウスにおいて糖・脂質代謝を改善する

河合博成1) 、佐々木貴生1) 、櫻田久美2,6) 、松井道宣2) 、矢野昌充3) 、河田照雄4) 、西野輔翼5,6)

1) アークレイ株式会社 からだサポート研究所
2) 医療法人同仁会(社団)同仁会クリニック
3) 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター
4) 京都大学大学院農学研究科 食品生物科学専攻 食品分子機能学分野
5) 立命館大学
6) 京都府立医科大学

方法

  • 被験者 :メタボリックシンドローム予備群の40~74歳の男女60名(男性24名。女性36名)
  • 被験食 :ミカン風味飲料 87g/日 ( ミカンエキスを含む低粘性飲料 )
  • 摂取量 :β-クリプトキサンチンとして 1, 3, 6 mg/日(被験者を用量で3群に分けた)
  • 摂取期間:12週間
  • 検査時期:摂取前、摂取6週後、12週後
  • 検査内容:診察、理学的検査、血液・尿検査、等

結果

  1. β-クリプトキサンチンによる効果に用量相関は認められなかったため、用量の3群を一括して評価を行った。
  2. LDLコレステロール(図1)、総コレステロール、nonHDLコレステロールおよびLDL-C/HDL-Cが有意に減少した。LDLコレステロールの異常群と正常群では異常群のみ有意に値が低下した(図2)。
  3. 腹囲、体重およびBMIが有意に減少した。腹囲の異常群と正常群では異常群のみ有意に値が低下した(図3)。
LDLコレステロールの変化(全例N=60)

図1. LDLコレステロールの変化(全例N=60)

LDLコレステロールの異常群と正常群による変化の差

図2. LDLコレステロールの異常群と正常群による変化の差

腹囲の異常群と正常群による変化の差

図3. 腹囲の異常群と正常群による変化の差

まとめ

ミカンエキスはメタボリックシンドロームや動脈硬化の予防および進展防止に有用である可能性が示唆された。

語句説明

ア)β-クリプトキサンチン
β-クリプトキサンチンは温州みかんに特異的に含まれる成分で、α-カロテン、β-カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン、リコペンとともに、ヒト血液中の主要カロテノイド6種類の一つです。
他のカロテノイドに比べ、β-クリプトキサンチンの機能性についてはこれまで情報が少ない状況でしたが、(独)農業・生物系特定産業技術研究機構果樹研究所を中心としたグループの最近の疫学研究などを通じて、β-クリプトキサンチンの新しい様々な機能性が明らかとなってきており、糖尿病・肝疾患・動脈硬化・骨粗鬆症等の生活習慣病との関連も検討され、注目されている成分です。
イ)日本栄養・食糧学会
社団法人 日本栄養・食糧学会は、1947年5月2日に設立された学会で、栄養科学ならびに食糧科学に関する学理および応用の研究についての発表、知識の交換、情報の提供を行う事により、栄養科学、食糧科学の進歩普及を図り、わが国における学術の発展と国民の健康増進に寄与することを目的としている学会です。
ウ)LDLコレステロール
LDL-コレステロールとは、低密度リポタンパク質(LDL)に包まれたコレステロールのことであり、肝臓で合成されたコレステロールを末梢組織へ輸送する働きがあります。 血中濃度が高くなると、血管内壁にへばりつき、動脈硬化の促進する危険因子になります。 そのため、悪玉コレステロールとも呼ばれています。
LDLコレステロール値の基準範囲は65~139mg/dL で、閉経後の女性のLDLコレステロールの基準範囲は、70~159mg/dLとされています。
エ)日本肥満学会
1980年に肥満研究会として発足し、単なる「肥満」と病的な「肥満症」の概念を明確に定義し、肥満症に対する基礎的及び臨床的研究の一層の充実を図ることを目的として活動している会員数約2,400名(2008年現在)の学会です。
オ)PPARγ
PPARはペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体と呼ばれ、核内受容体スーパーファミリーに属するリガンド依存的転写因子です。PPARγは 哺乳動物において見出されている3つのサブタイプの一つで、主に脂肪細胞に特異的に発現し、脂肪細胞の分化と密接に関連しています。
カ)nonHDLコレステロール
(nonHDLコレステロール)=(総コレステロール)-(HDLコレステロール)の式で算出される。この指標はトリグリセライド(TG)が食事の影響を受けやすく変動しやすいため、昨今、高TG血症の状況を判断するための安定した合理的な脂質管理指標として有用度が高くなっています。

研究の背景

アークレイについて

アークレイは臨床検査機器・試薬メーカーで、糖尿病患者が使用する血糖自己測定器ではマーケットリーダーとして国内で大きなシェアを占めています。「世界中の人々の健康な生活に貢献する」の理念の下、患者のケア、病気の予防まで広く貢献するためのアイテムの開発も行っています。

機能性食品素材への取り組み

アークレイはこれまで柑橘類に含まれる機能性成分についてメタボリックシンドロームに関する研究を進めてきました。特に日本人になじみ深い「温州みかん」中の機能成分であるβ-クリプトキサンチンに着目し、種々の疫学研究結果、脂肪細胞に対する基礎的研究をベースに、機能性食品素材「クリプトベータ TM 」を開発しました。

β-クリプトキサンチンに関する学会発表

学会(開催年月) 発表内容
第28回日本肥満学会エ)
(2007年10月)
クリプトベータ TM 」に豊富に含まれるβ-クリプトキサンチンが、脂肪細胞を用いた研究においてPPARγオ)活性抑制作用を有し、脂肪細胞の肥大を抑制し、さらに脂質合成を抑えることでメタボリックシンドロームに対して予防効果が期待できることを発表しました。
第62回日本栄養食糧学会
(2008年5月)
クリプトベータ TM 」含有飲料を摂取することで、総コレステロール値およびnonHDLコレステロールカ)値を有意に減少させることがわかり、メタボリックシンドロームや動脈硬化の予防および進展阻止に有用であることを報告しました。
第29回日本肥満学会
(2008年10月)
肥満・糖尿病マウスを用いた摂取試験によりβ-クリプトキサンチンが糖・脂質代謝異常を改善し、その一部が脂肪組織におけるPPARγ活性抑制作用によるものであることを報告しました。

今後の展望

アークレイでは、温州みかんに含まれるβ-クリプトキサンチンについてメタボリックシンドローム予防という観点から、作用メカニズムに関する基礎的な検討から、ヒトでの検証までを行い、その有用性を見出してきました。今後は機能性食品素材「クリプトベータ TM 」を通して、人々の健康な生活に貢献すると共に、その有用性について広く普及させていく予定です。

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