温州みかんのβ-クリプトキサンチンでメタボ対策

プレスリリース

温州みかん中のβ-クリプトキサンチン

脂肪細胞肥大抑制効果を確認 第28回日本肥満学会にて発表

温州みかんとβ-クリプトキサンチン

アークレイ株式会社は、温州ミカン中に多く含まれる成分であるβ-クリプトキサンチン 1) が、脂肪細胞の肥大を抑制し、さらに脂質合成を抑えることでメタボリックシンドロームに対して予防効果が期待できることを見出し、その研究成果を第28回日本肥満学会 2) (10月19日~20日開催)にて発表いたしました。

研究の概要

アークレイは2006年6月より機能性素材事業に参入し、β-クリプトキサンチンを高含有した食品原料である温州みかんエキス「クリプトベータ(商品名)」について各種展示会を通じて、情報提供を行ってきました。

このたび、「クリプトベータ」に豊富に含まれるβ-クリプトキサンチンの脂肪細胞への影響に関して、アークレイ株式会社、京都大学大学院農学研究科 河田教授、(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 矢野先生との共同研究成果を第28回日本肥満学会(東京)にて発表を行いました。

本発表では、β-クリプトキサンチンによる核内受容体PPAR-γ 3) に対するアンタゴニスト 4) 作用を明らかにし、さらにDNAアレイ 5) を用いて脂質生成、中性脂肪合成に関わる遺伝子発現量の減少を確認しました。

これらの結果から、β-クリプトキサンチンは脂肪細胞の肥大を抑制し、さらに脂質合成を抑えることでメタボリックシンドロームに対して予防効果が期待できることを見出しました。

また当社では、β-クリプトキサンチンを高濃度に含んだ食品素材「クリプトベータ」を用いて、メタボリックシンドローム予備群に対するヒト試験を実施したところ、脂質代謝改善効果を確認しており、本研究結果の詳細について、農林水産省主催のアグリビジネス創出フェア2007 6) (11月27日~28日、東京国際フォーラム)において発表する予定です。

近年疫学調査を中心に種々の健康機能が見出されている「β-クリプトキサンチン」について、当社ではメタボリックシンドローム予防の観点から、今回肥満学会で発表を行った基礎的な作用機構の解明から、ヒトでの飲用試験を通してその有用性を追求していくとともに、β-クリプトキサンチンを含む食品素材である「クリプトベータ」により、人々の健康な生活づくりに貢献していきます。

β-クリプトキサンチンが脂肪細胞分化に及ぼす影響;アンタゴニスト活性の検討

大山夏奈 *、黒柳佳代 *、植村卓 *、後藤剛 *、矢野昌充 **、佐々木貴生 ***、河田照雄 *

* 京都大学大学院農学研究科 食品生物科学専攻 食品分子機能学分野
** 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所
*** アークレイ(株)

1. β-クリプトキサンチンのPPAR-γ活性に及ぼす影響

(1) 方法

ヒト由来PPARsリガンド結合部位、酵母由来GAL4-DNA結合部位を有するキメラタンパク質を用いたレポーターアッセイによって、PPAR-γ活性化能を評価した。

(2) 結果

βークリプトキサンチンは、レポーターアッセイにおいて、単独添加ではPPAR-γ活性がやや上昇したが、ピオグリタゾン 7) と共添加した場合では、活性上昇の抑制効果が認められた。

レポーターアッセイ

2. β-クリプトキサンチンが脂肪細胞分化に及ぼす影響

(1) 方法

培養脂肪細胞(3T3-L1)を用いて、PPAR-γ標的遺伝子の発現量および培地への分泌量を検討した。

(2) 結果

3T3-L1細胞においてβークリプトキサンチン添加において脂肪細胞分化の抑制、PPAR-γ標的遺伝子発現量の減少が見られた。

3T3-L1細胞

3. β-クリプトキサンチンが脂肪細胞の遺伝子動態に及ぼす影響

(1) 方法

β-クリプトキサンチン添加後の脂肪細胞のDNAマイクロアレイ解析を行った。

(2) 結果

βークリプトキサンチンを添加した群は、脂質生成、TG合成に関わる遺伝子発現量の減少が見られた。

まとめ

βークリプトキサンチンはPPAR-γ活性抑制作用を持つPPAR-γアンタゴニストである可能性が示唆され、脂肪細胞の肥大を抑制し、さらに脂質合成を抑えることでメタボリックシンドロームに対する予防効果が期待される。

語句説明

1) β-クリプトキサンチン
β-クリプトキサンチンは温州みかんに特異的に含まれる成分で、α-カロテン、β-カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン、リコペンとともに、ヒト血液中の主要カロテノイド6種類の一つです。
他のカロテノイドに比べ、β-クリプトキサンチンの機能性についてはこれまで情報が少ない状況でしたが、(独)農業・生物系特定産業技術研究機構果樹研究所を中心としたグループの最近の疫学研究などを通じて、β-クリプトキサンチンの新しい様々な機能性が明らかとなってきており、糖尿病・肝疾患・動脈硬化・骨粗鬆症等の生活習慣病との関連も検討され、注目されている成分です。
2) 日本肥満学会
1980年に肥満研究会として発足し、単なる「肥満」と病的な「肥満症」の概念を明確に定義し、肥満症に対する基礎的及び臨床的研究の一層の充実を図ることを目的として活動している会員数約2,000名(2007年現在)の学会です。
3) PPAR
ペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体と呼ばれ、核内受容体スーパーファミリーに属するリガンド依存的転写因子です。 哺乳動物においては3つのサブタイプが見出され、肝臓、心臓、骨格筋、褐色脂肪細胞、腎臓などに発現し、主に脂質代謝に関連するα(アルファ)型、脂肪細胞に特異的に発現し、脂肪細胞の分化と密接に関連しているγ(ガンマ)型、広範な組織に発現し、α(アルファ)と同様、脂肪酸の分解代謝に関与しているδ(デルタ)型が存在します。
4) アンタゴニスト (antagonist)
アンタゴニストとは、別名で拮抗薬(きっこうやく)、拮抗剤(-ざい)、拮抗物質(-ぶっしつ)、遮断薬(しゃだんやく)と呼ばれています。受容体に結合はするが、生体物質と異なり生体反応を起こさず、またその結合によって本来結合すべき生体内物質と受容体の結合を阻害し、生体応答反応を起こさない薬物のことを示します。アンタゴニストの場合には受容体と結合してもその立体配座の変化をひき起こさないかあるいは立体配座の変化が大きすぎて化学伝達物質とは反応できなくなります。
5) DNAアレイ
DNAアレイは、一度に数千から1万種類の遺伝子の発現量を一度に解析できる技術です。その原理は、非常に小さな区画にそれぞれの遺伝子に対応するcDNA(あるいは相補的なoligomer)を貼り付けた基盤上で(通常~数cm2位)、標識したRNA(あるいはDNA)を反応させてレーザースキャナ一等でその強度を読み取り、そこから出てくる大量の生データをコンピュータで解析するものです。この技術は、遺伝子発現量の比較のみならず遺伝子診断や細菌、ウイルスなどの検出、あるいはSNPsの解析等にも威力を発揮しています。
6) アグリビジネス創出フェア2007
農林水産省が主催するフェアで民間企業等が有するニーズと独立行政法人をはじめとする関係研究機関が有する技術シーズとの出会いの場を通じて新たなアグリビジネス創出の機会の増大を図ることを目的としています。本年は11月27日(火)~28日(水)、東京国際フォーラムで開催され、120~150団体が出展予定で、目標来場者数は8,000人です。
7) ピオグリタゾン
チアゾリジン誘導体のインスリン抵抗性改善薬で、一般名が塩酸ピオグリタゾン 、商品名 は「アクトス」 です。作用機序 としては筋肉・脂肪組織及び肝臓におけるインスリン抵抗性を改善することにより、筋肉・脂肪組織での糖の取り込みと利用を促進し、肝臓では糖の放出を抑制します。脂肪細胞の核内受容体型転写因子PPAR-γに結合し、試験管内(in vitro)で、(グルコールの消費を促進させ、)脂肪細胞の分化を促進する(肝臓や筋肉で中性脂肪の蓄積が促進する)作用があります。

研究の背景

アークレイは、厳しい食事制限下にある生活習慣病患者や健康を意識する方々に様々な商品を提案し、物質面と精神面の両方をケアすることでQOL(Quality Of Life = 生活の質)の維持・向上に貢献する活動を進めております。また、2006年6月には機能性素材ビジネスへの参入を果たし、本事業を通じて、自社技術にとらわれず、幅広く社会に貢献する活動を進めております。

「2005年国民健康・栄養調査」(厚生労働省)の中で、40~74歳の中高年男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の該当者か予備群であることが公表されました。また、来年度からは国の生活習慣病対策として、メタボリックシンドロームに着目した特定健診・保健指導が全国で開始されることになっており、ますますメタボリックシンドロームに注目が集まっています。

このような背景において、当社はこれまで柑橘類に含まれる機能性成分についてメタボリックシンドロームに関する研究を進めてきました。特に日本人になじみ深い「温州みかん」中の機能成分である「β-クリプトキサンチン」に着目し、種々の疫学研究結果をベースに、食品素材「クリプトベータ」として開発し、各種展示会などを通じて発表してまいりました。

このたび新たに、「クリプトベータ」に豊富に含まれるβ-クリプトキサンチンの脂肪細胞への影響に関する研究成果について、アークレイ株式会社、京都大学大学院農学研究科、(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所との共同研究成果を第28回日本肥満学会(東京)にて発表を行いました。

今後の展望

β-クリプトキサンチンを高濃度に含んだ食品素材である「クリプトベータ」を用いて、メタボリックシンドローム予備群に対するヒト試験を実施したところ、脂質代謝改善効果を確認しており、本研究結果の詳細について、農林水産省主催のアグリビジネス創出フェア2007(11月27日~28日、東京国際フォーラム)について発表する予定です。

当社では「β-クリプトキサンチン」について、メタボリックシンドローム予防の観点から、今回肥満学会で発表を行った基礎的な作用機構の解明から、ヒトでの飲用試験を通してその有用性を追求していくとともに、β-クリプトキサンチンを含む業務用食品素材「クリプトベータ」により、人々の健康な生活づくりに貢献していきます。

リリース全文ダウンロード

本プレスリリースはPDFファイルでもご覧頂けます。

GET ACROBAT READER

PDF形式のファイルをご覧いただくためには、Adobe Systems社のAdobe(R) Reader(R) (無料)が必要です。Adobe(R) Reader(R)を入手する

関連記事一覧