β-クリプトキサンチンの肥満・糖尿病の改善効果を実証

プレスリリース

温州みかんの成分 ”β-クリプトキサンチン”

肥満・糖尿病の改善効果を実証 ~第29回日本肥満学会にて発表~

温州みかんとβ-クリプトキサンチン

アークレイ株式会社(本社:京都市中京区、以下、アークレイ)は、肥満・糖尿病マウスを用いた摂取試験によりβ-クリプトキサンチン 1) が糖・脂質代謝異常を改善し、その一部が脂肪組織におけるPPARγ 2) 活性抑制作用によるものであることを見出し、その研究成果を第29回日本肥満学会 3) (10月17日~18日開催)にて発表いたしました。

研究の概要

アークレイは2006年6月より機能性素材事業に参入し、β-クリプトキサンチン(β-CRP)を高含有した食品原料である温州みかんエキス「クリプトベータ TM (商品名)」について各種展示会を通じて、情報提供を行っております。

このたび、肥満・糖尿病マウスを用いた試験においてβ-クリプトキサンチンの糖・脂質代謝改善作用について、京都大学大学院農学研究科 河田照雄教授、独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 矢野昌充先生とアークレイの共同研究成果を第29回日本肥満学会(大分)にて発表を行いました。

本発表では、肥満・糖尿病モデルマウスにβ-クリプトキサンチンを摂取させたところ、脂肪組織重量の減少傾向が認められ、さらに脂肪組織においてPPARγ標的遺伝子発現を減少させ、脂肪細胞のサイズが小さくなることを確認いたしました。また、β-クリプトキサンチンの摂取により絶食時血糖値低下作用を示し、経口糖負荷試験結果から、耐糖能改善効果を有することを確認いたしました。これらの結果からβ-クリプトキサンチンは糖・脂質代謝異常の改善作用を有し、その一部は脂肪組織におけるPPARγ活性抑制によるものであることが示唆されました。

今回の成果を含むこれまでの研究により、近年疫学調査を中心に種々の健康機能が見出されているβ-クリプトキサンチンについて当社ではメタボリックシンドローム予防の観点において、細胞および動物試験での基礎的な作用機構の解明から、ヒトでの飲用試験を通してその有用性を見出しました。

今後は、β-クリプトキサンチンを含む食品素材である「クリプトベータ TM 」により、人々の健康な生活づくりに貢献していきます。

β-クリプトキサンチンは肥満・糖尿病モデルマウスにおいて糖・脂質代謝を改善する

大山夏奈1)、黒柳佳代1)、植村卓1)、後藤剛1)、平井静1)、高橋信之1)、矢野昌充2)、
佐々木貴生3)、河田照雄1)

1) 京都大学大学院農学研究科 食品生物科学専攻 食品分子機能学分野
2) 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所
3) アークレイ株式会社 新規事業部 からだサポート研究所

方法

  • 実験動物: KK-Ay/TaJcl (雄)
  • 実験群 : Control群, 0.05% or 0.1% β-CRP摂取群
  • 実験試料: Diet research社製High fat diet (60 kcal%), pair fed
  • 実験スケジュール:以下の図を参照
  • 測定項目:血中パラメーター (insulin, NEFA, leptin, adiponectin)、臓器TG含量 (肝臓, 骨格筋)、mRNA発現量 (精巣周囲脂肪, 肝臓, 骨格筋)、白色脂肪細胞サイズ
実験スケジュール

結果

β-クリプトキサンチンは高脂肪食下による脂肪細胞の肥大化を抑制する。

脂肪細胞の肥大化を抑制

β―クリプトキサンチンは耐糖能を改善し、血中インスリン量を低下させる。

血中インスリン量を低下

まとめ

これまでの研究結果から、β-クリプトキサンチンの抗メタボリックシンドローム作用について下図メカニズムを推定している。

β-クリプトキサンチンの抗メタボリックシンドローム作用

語句説明

1) β-クリプトキサンチン
β-クリプトキサンチンは温州みかんに特異的に含まれる成分で、α-カロテン、β-カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン、リコペンとともに、ヒト血液中の主要カロテノイド6種類の一つです。他のカロテノイドに比べ、β-クリプトキサンチンの機能性についてはこれまで情報が少ない状況でしたが、(独)農業・生物系特定産業技術研究機構果樹研究所を中心としたグループの最近の疫学研究などを通じて、β-クリプトキサンチンの新しい様々な機能性が明らかとなってきており、糖尿病・肝疾患・動脈硬化・骨粗鬆症等の生活習慣病との関連も検討され、注目されている成分です。
2) PPARγ
PPARはペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体と呼ばれ、核内受容体スーパーファミリーに属するリガンド依存的転写因子です。PPARγは 哺乳動物において見出されている3つのサブタイプの一つで、脂肪細胞に特異的に発現し、脂肪細胞の分化と密接に関連しています。
3) 日本肥満学会
1980年に肥満研究会として発足し、単なる「肥満」と病的な「肥満症」の概念を明確に定義し、肥満症に対する基礎的及び臨床的研究の一層の充実を図ることを目的として活動している会員数約2,400名(2008年現在)の学会です。
4) アンタゴニスト
アンタゴニスト (antagonist)、別名拮抗薬(きっこうやく)、拮抗剤(-ざい)、拮抗物質(-ぶっしつ)、遮断薬(しゃだんやく)と呼ばれています。受容体に結合はするが、生体物質と異なり生体反応を起こさず、またその結合によって本来結合すべき生体内物質と受容体の結合を阻害し、生体応答反応を起こさない薬物のことを示す。アンタゴニストの場合には受容体と結合してもその立体配座の変化をひき起こさないかあるいは立体配座の変化が大きすぎて化学伝達物質とは反応できなくなります。
5) 日本栄養・食糧学会
社団法人 日本栄養・食糧学会は、1947年5月2日に設立された学会で、栄養科学ならびに食糧科学に関する学理および応用の研究についての発表、知識の交換、情報の提供を行う事により、栄養科学、食糧科学の進歩普及を図り、わが国における学術の発展と国民の健康増進に寄与することを目的としている学会です。
6) nonHDLコレステロール
(nonHDLコレステロール)=(総コレステロール)-(HDLコレステロール)の式で算出される。この指標はトリグリセライド(TG)が食事の影響を受けやすく変動しやすいため、昨今、高TG血症の状況を判断するための安定した合理的な脂質管理指標として有用度が高くなっています。

研究の背景

アークレイについて

アークレイは臨床検査機器・試薬メーカーで、糖尿病患者が使用する血糖自己測定器ではマーケットリーダーとして国内で大きなシェアを占めています。「世界中の人々の健康な生活に貢献する」の理念の下、患者のケア、病気の予防まで広く貢献するためのアイテム(食品、日用品など)を開発してきました。

機能性食品素材への取り組み

アークレイはこれまで柑橘類に含まれる機能性成分についてメタボリックシンドロームに関する研究を進めてきました。特に日本人になじみ深い「温州みかん」中の機能成分であるβ-クリプトキサンチンに着目し、種々の疫学研究結果、脂肪細胞に対する基礎的研究をベースに、食品素材「クリプトベータ TM 」を開発しました。

β-クリプトキサンチンに関する学会発表

学会(開催年月) 発表内容
第28回日本肥満学会
(2007年10月)
クリプトベータ TM 」に豊富に含まれるβ-クリプトキサンチンが、脂肪細胞を用いた研究においてPPARγのアンタゴニスト(拮抗) 4) 作用を有し、脂肪細胞の肥大を抑制し、さらに脂質合成を抑えることでメタボリックシンドロームに対して予防効果が期待できることを発表しました。
第62回日本栄養食糧学会 5)
(2008年5月)
クリプトベータ TM 」含有飲料を摂取することで、総コレステロール値およびnonHDLコレステロール 6) 値を有意に減少させることがわかり、メタボリックシンドロームや動脈硬化の予防および進展阻止に有用であることを報告しました。

今後の展望

アークレイでは、温州みかんに含まれるβ-クリプトキサンチンについてメタボリックシンドローム予防という観点から、作用メカニズムに関する基礎的な検討から、ヒトでの検証までを行い、その有用性を見出してきました。今後は食品原料「クリプトベータ TM 」を通して、人々の健康な生活に貢献すると共に、その有用性について広く普及させていく予定です。

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