第29回日本肥満学会 | 発表報告
2008年10月17日(金)~18日(土)、大分全日空ホテル オアシスタワーにおいて「第29回日本肥満学会」が開催されました。
本学会は、1980年に肥満研究会として発足し、単なる「肥満」と病的な「肥満症」の概念を明確に定義し、肥満症に対する基礎的及び臨床的研究の一層の充実を図ることを目的として活動している会員数約2,400名(2008年現在)の学会です。
本年会において、10月18日(土)、「クリプトベータ」に豊富に含まれるβ-クリプトキサンチンに関して、「β-クリプトキサンチンは、肥満・糖尿病モデルマウスにおいて糖・脂質代謝を改善する」というタイトルで、アークレイ株式会社、京都大学大学院農学研究科 食品生物科学専攻 食品分子機能学分野、(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所の共同研究成果の発表を行いました。
昨年の肥満学会では、β-クリプトキサンチンよる核内受容体PPARγ(※)に対するアンタゴニスト作用をin vitroでの実験系において明らかにし、さらにDNAアレイを用いて脂質生成、中性脂肪合成に関わる遺伝子発現量の減少を確認したことを発表いたしました。
今回の発表は前回の研究を更に進め、肥満・糖尿病モデルマウスにβ-クリプトキサンチンを混ぜた高脂肪食を投与し、in vitroで確認した糖・脂質代謝改善作用を示すかを調査しました(図1)。
その結果、β-クリプトキサンチンを投与したマウスは、脂肪細胞サイズが小さくなることが確認されました(図2)。
また経口糖負荷試験から、血糖値の低下、インスリン量の減少が確認され、耐糖能改善効果を有することが示唆されました(図3、4)。
更にPPARγ標的遺伝子発現量の有意な減少も認められ、生体内でもPPARγの発現を抑えることで糖・脂質代謝を改善することが確認されました(図5)。
発表は口頭発表という形式で行われ、共同研究先である京都大学大学院農学研究科所属の大山夏奈さんが昨年に引き続き発表されました。今回は口頭発表ということで朝早い時間にもかかわらず会場はほぼ満員の状態で多くの方に発表を聞いていただくことができました。質疑応答も活発に行われ、身近にある食品成分による抗メタボリックシンドローム作用を動物で明らかにしたことは多くの方に非常に興味を持っていただけたのではないかと感じました。更にシンポジウムでも京都大学農学研究科 食品分子機能学 助教 高橋信之先生から「脂溶性栄養素と核内受容体による脂肪細胞機能制御」と題してβ-クリプトキサンチンの機能性についてご発表いただきました。
これまでは、ミカンを食べることで健康増進作用があるといわれていましたが、その有効性を示す主要な成分がβ-クリプトキサンチンであることが明らかにされたことで、今後β-クリプトキサンチンを含む食品の有効利用に弾みがつくと思われます。
現在、わたしどもでは弊社β-クリプトキサンチン高含有素材「クリプトベータ」を用いたヒト臨床試験を実施しており、最終的にはヒトでの有効性を明らかにしていく予定ですのでご期待ください。
- (※)PPARγ
- PPARはペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体と呼ばれ、核内受容体スーパーファミリーに属するリガンド依存的転写因子です。PPARγは 哺乳動物において見出されている3つのサブタイプの一つで、脂肪細胞に特異的に発現し、脂肪細胞の分化と密接に関連しています。
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