学術情報
β-クリプトキサンチンの特徴
β-クリプトキサンチンの特徴
体内動態
エステル体として摂取されたβ-クリプトキサンチンは、消化管内でフリー体となります。
一般的にフリーのカロテノイドは胆汁酸、脂肪酸、コレステロールなどと共に混合ミセルを形成し、小腸上皮細胞で受動拡散により吸収されます。
その後、一旦キロミクロンで肝臓へ移動し、その後VLDLとLDLによって末梢組織へ運ばれます。
このとき、β-クリプトキサンチンは、末梢組織においてエステル体に戻されて貯蔵されます。
みかんをたくさん食べ続けた時に皮膚が黄色くなるのは、β-クリプトキサンチンが吸収されて皮膚に到達していることを示しています。
これは、みかんを食べるのをやめると元の皮膚の色に戻ることからも裏付けられます。
このとき、肌の黄色の濃淡は、β-クリプトキサンチンの血中濃度の増減と並行して動きます。
一方、β-クリプトキサンチンはプロビタミンAとして、必要に応じて体内でビタミンAに変換されます。
血中濃度
みかんの摂取量とβ-クリプトキサンチンの血中濃度
みかんの摂取量に応じて、β-クリプトキサンチンの血中濃度が上がることが確認されています。
また、血中濃度の半減期は1~2ヶ月と長いため、みかんがたくさん流通する時期(11月~2月)にみかんを多く食べた人は、みかんをあまり食べない春から秋も比較的血中濃度が高いことが認められています。
図.血清β-クリプトキサンチン濃度と温州みかん摂取頻度の関係
(出典:Sugiura M, Katoh M, Matsumoto H, Nagao A, Yano M. Serum concentration of β-cryptoxanthin in Japan reflects the frequency of Satsuma mandarin (Citrus unshiu Marc.) consumption. J Health Sci 2002; 48: 350-3.)
みかんが最もβ-クリプトキサンチンの血中濃度に影響を与える
みかん産地の住民を対象とした調査で、β-クリプトキサンチンのヒト血清濃度に影響する要因は食品ではミカンの関与が最も大きいことが確認されました。
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所ホームページ(アーカイブ)
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/fruit/
トップ>研究成果情報>平成15年度果樹試験研究成果情報
「ミカン産地地域住民の血清中β-クリプトキサンチン濃度に影響する要因は食品ではミカンの関与が最も大きい」
構造上の特徴
図.β-カロテンの構造式
図.β-クリプトキサンチンの構造式
図.ゼアキサンチンの構造式
プロビタミンA
β-クリプトキサンチンは、体内で必要に応じてビタミンAに変換されます。 また、この機能を持つカロテノイドは、プロビタミンAと総称されます。
ここでは、β-クリプトキサンチンのビタミンAとしての特徴について述べますが、他のプロビタミンAにはあまり認められないβ-クリプトキサンチンとしての有用性は、次々回以降で詳しく記載します。
レチノール当量(ビタミンAとしての効力)
カロテノイドが体内で、ビタミンAとして働く量が以下の式で示されています。
レチノール当量(μg) = レチノール(μg) + 1/12 β-カロテン(μg) + 1/24 α-カロテン(μg)
+ 1/24 β-クリプトキサンチン(μg)
これによるとβ-クリプトキサンチン重量の24分の1がビタミンAとして働くことになります。
ビタミンAの機能
ビタミンAは、皮膚や粘膜の正常保持・視覚の正常化・成長および分化に関与しています。
ビタミンAの欠乏症
欠乏症として、夜盲症、皮膚の角化、粘膜異常、輸精管上皮変性、睾丸萎縮、子宮粘膜角化、分化・発生誘導異常などが認められています。
ビタミンAの過剰症
過剰症として、頭痛、吐き気、骨や皮膚の変化等が確認されています。
プロビタミンAは必要な分しかビタミンAに変換されませんので、過剰症を生じさせません。従って、β-クリプトキサンチン等を多く含む食品をたくさん摂っても、過剰症になることはありません。
ビタミンAを多く含む食品
プロビタミンAから変換されるものとは別に、ビタミンAを直接含むものが動物性の食品としてあります。
ビタミンAを多く含む食品としては、レバー類、うなぎの蒲焼、銀だらなどがあります。
ビタミンAの必要量
ビタミンAの1日当たりの推奨量は、レチノール当量として、成人男性で700~750μg、成人女性で600μgです(老人、妊婦、授乳婦を除く)。
参考文献
- 高市真一ら,カロテノイド-その多様性と生理活性-,裳華房,2006.
- 日本人の食事摂取基準 2005年版 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/11/h1122-2.html
- 矢野昌充: Foods Food Ingredients J.Jpn. 212: 557~563, 2007.