学術情報
温州みかんとは
温州みかんとは
温州みかんの概要
温州みかんは、日本国内で一般に「みかん」と呼ばれている果物の正式名称です。小売店などであまり表示はされていませんが、以下のとおり温州みかんの中にもいろいろな品種や系統があります。
品種および主な系統
表.品種および主な系統
極早生種(9月中旬~) | 日南1号、宮本、岩崎など |
---|---|
早生種(10月中旬~) | 宮川、興津、三保など |
普通種(11月下旬~) | 青島、南柑4号、大津4号など |
なお、「有田みかん」、「愛媛みかん」、「三ケ日みかん」などは産地のブランド名であって、品種の名前ではありません。
温州みかんの歴史
温州みかんの原産地は鹿児島県の長島と考えられています。
温州みかんが英語でSatsuma Mandarinと呼ばれるゆえんです。温州みかんの「温州」という呼び名は、中国のみかん産地にあやかってつけられたもので、中国の温州地方から伝来したことを意味しているわけではありません。
温州みかんは江戸時代初期の頃(約400年前)、中国の浙江省から伝えられた早橘(ソウキツ)や慢橘(マンキツ)などの柑橘類から偶発実生1)した品種と考えられています。その後、300年余り九州だけで栽培されていましたが、明治時代から大正時代にかけて他の地方に伝えられて、いろいろな優良系統が作られ増産されるようになりました。
現在の品種を大別すると、極早生種、早生種、普通種の3品種となり、極早生種と早生種は共に普通種から枝変わり2)で生じたものです。
一方、温州みかんの果皮を乾燥したものは陳皮(チンピ)と呼ばれ、漢方薬や香辛料として使用されてきました。生薬としては、わが国の医薬品の規格書である、日本薬局方に収載されています。また、香辛料としては、七味唐辛子の中の原材料として身近に使われています。
1) 偶発実生(ぐうはつみしょう) 自然交雑も含まれるが、人間が改良や播種などの目的意識を持たずに得られた実生。(実生:種子から発芽して生じた植物)
2) 枝変わり 芽の成長点の細胞が突然変異を起こし、そこから生じた枝全体が、他と異なる形質を持つようになること。
温州みかんの生産量
温州みかんは、現在日本において最も生産量の多い果実であり、農林水産省の農林水産統計によりますと、2006年産と2007年産の平均3)では年間約85万tを生産しています。
3) みかんは、果実数が多くなる年(表年)と少なくなる年(裏年)とが交互に発生する現象(隔年結果)が顕著なため平均値としました。
図. 温州みかんの収穫量と出荷量の推移
結果樹面積(ha) | 収穫量(t) | 出荷量(t) | |
---|---|---|---|
和歌山 | 7,600 | 185,400 | 169,400 |
愛媛 | 7,520 | 168,300 | 153,100 |
静岡 | 5,780 | 146,200 | 130,000 |
熊本 | 4,620 | 97,000 | 89,100 |
佐賀 | 2,980 | 72,100 | 67,500 |
長崎 | 3,590 | 75,400 | 67,300 |
広島 | 2,670 | 41,400 | 34,200 |
福岡 | 1,970 | 36,100 | 33,000 |
愛知 | 1,420 | 36,200 | 31,700 |
三重 | 1,380 | 27,600 | 23,500 |
国民1人あたりの温州みかん摂取量
家計調査から計算すると、日本国民1人当たり年間約4.7㎏の温州みかんを摂取していることになります。1個を100g とし、摂取する期間を11月から2月までの4ヶ月(120日)とすると、平均して5日に2個を食している計算となります。
温州みかんの収穫時期
露地で栽培された温州みかんは、9月頃に収穫され始め、翌年2月頃に終了します。最盛期は11月から12月です。
温州みかんの栄養成分
温州みかんの栄養成分は、下表のとおりです。
エネルギー | 46kcal |
---|---|
たんぱく質 | 0.7g |
脂質 | 0.1g |
糖質 | 11.0g |
食物繊維 | 1.0g |
ナトリウム | 1mg |
ビタミンC | 32mg |
β-クリプトキサンチン | 1700μg |
出典:五訂増補日本食品標準成分表「うんしゅうみかん じょうのう(普通・生)」
この他に、有用成分として、ヘスペリジン(ビタミンP)が入っています。
陳皮(チンピ)(生薬、漢方薬、和漢薬)
基源
日本産は、温州みかんの成熟した果皮を乾燥したものです。中国産は、オオベニミカンおよびコベニミカンの成熟した果皮を乾燥したものです。未熟な果皮を乾燥したものは「青皮」と呼ばれます。
薬味、薬性
苦、辛、温。
用途
芳香性健胃、駆風、去痰、鎮咳薬として、食欲不振、嘔吐、瀉下、疼痛、咳嗽などに応用します。
漢方処方例
平胃散(へいいさん)、茯苓飲(ぶくりょういん)、六君子湯(りっくんしとう)、二陳湯(にちんとう)、分心気飲(ぶんしんきいん)
参考文献
- (独)食品総合研究所(編), 食品大百科事典, 朝倉書店, 2001.
- 河野友美,果物・種実(新・食品事典6), 真珠書院, 1991.
- 農林水産省 農林水産統計 平成19年産みかんの収穫量及び出荷量
- 難波恒雄, 和漢薬百科図鑑[Ⅰ], 保育社, 1993.