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柑橘類中の機能成分

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柑橘類中の機能成分

柑橘類には特有の機能成分が含まれており、代表的な成分には以下の5種類があります。

フラボノイド (Flavonoid)

フラボノイド類は多様であり、ルチンやケルセチンなどの野菜や果実一般にみられるもの、ヘスペリジンやナリンギンといった柑橘特有のフラバノン類、ロイフォリン、ディオスミンなどのフラボン類、ノビレチン、タンゲレチンなどのポリメトキシフラボノイドに分類できます。フラボノイドは一般的に果皮内側の白い部分のアルベドに高濃度で存在しますが、果実における分布状態は種により異なります。フラボノイドの機能性に関する研究例は多く、ヘスペリジンやナリンギンにガン細胞に対するアポトーシス誘導作用、脂質代謝改善作用、抗炎症作用などが報告され、ノビレチンやタンゲレチンなどのポリメトキシフラボノイドではガン細胞の浸潤・転移抑制作用、血漿VLDL濃度低下作用、さらには関節リウマチや関節破壊症に関与するマトリックスメタロプロテアーゼの産生を阻害することが明らかにされています。

柑橘類中の代表的なフラボノイド

カロテノイド (Carotenoid)

カロテノイドはプロビタミンA活性、抗酸化作用、発ガン抑制作用など各種の生理機能を有しています。柑橘類に特徴的に含まれるものとしては、代表的なものにうんしゅうみかんに多く含まれるβ-クリプトキサンチンがあります。β-クリプトキサンチンはα-カロテン、β-カロテン、リコペン、ゼアキサンチン、ルテインとともにヒト血液中に存在する6種類のカロテノイドの一つで、他のカロテノイドと比べて、その生理機能研究については遅れていましたが、近年、栄養疫学研究においてバイオマーカーとしての有用性、がん、糖尿病、リウマチに関する疾病リスク低減作用、発がん予防作用、骨粗鬆症予防作用などが見出されています。

βークリプトキサンチン

クマリン (Coumarin)

クマリンはフラボノイドと同様、カンキツでは他の植物由来のものとは異なる構造のものが含まれています。側鎖に多様な炭化水素鎖を有するクマリン類ですが、その代表的なものとしてオーラプテンがあります。オーラプテンは抗菌作用が知られていましたが、近年発がん抑制作用の研究が進んでいます。

オーラプテン

テルペン (Terpene)

テルペンは柑橘中に含まれる精油成分で、表皮のプツプツとした油胞とよばれる細胞の中に含まれています。テルペンの仲間には、オレンジ臭をもつリモネン、パイン臭をもつピネンなど、さまざまな香りをもった化合物が含まれています。リモネンには中枢神経の興奮を鎮静化する作用、発ガン抑制効果などの報告がされています。

リモノイド (Limonoid)

リモノイドは、柑橘特有の主要な苦味成分の一つです。この苦味の主成分であるリモニンおよびノミリンは果汁や加工品の製品価値を下げる成分としてみなされてきました。最近では、アグリコンにマウスやハムスターの発ガン抑制効果、グルタチオンS-トランスフェラーゼの誘導作用、昆虫類の摂食抑制効果などが報告されています。

このように柑橘類には多くの機能成分が含まれており、果物の種類によっても、分布は様々です。また、その成分の機能性についてもさらに研究が進められている段階です。

参考文献
  1. 野菜等健康食生活協議会ホームページ
  2. 独立行政法人 農林水産消費技術センター「パンフレット・広報誌、特集記事・食のサイエンス」(2002年1月第61号)
  3. 野方洋一、近中四農研報5、19-84(2005)
  4. 矢野昌充、医学のあゆみ、Vol.204、No.1、45-49(2003)
  5. 矢野昌充ら、食品工業、Vol.45、No.16(2002)
  6. 隅田孝司ら、食品工業、Vol.45、No.18(2002)
  7. 酒井重男、食の科学、No.305(2003)
  8. 矢野昌充ら、果樹研究所研究報告、第4号、13-28(2005)