柑橘および野菜摂取量による循環器疾患予防効果の比較
柑橘および野菜摂取量による循環器疾患予防効果の比較
厚生労働省研究班による多目的コホート研究(JPHC Study)のうち、柑橘類の摂取に関する知見について解説します。
調査対象
JPHC Studyでは、平成7年(1995年)と平成10年(1998年)において、国内9保健所管内に在住であった45~74才の男女約8万人を対象にし、平成14年(2002年)まで追跡した調査結果にもとづいて、野菜や果物の摂取量と全がん及び循環器疾患発生率との関連が調査されました。
調査方法
JPHC Studyでは、5年後調査時点で45―74歳の男女約8万人を対象に、野菜および果物の1日当たりの摂取量を算出しています。その後、約6年の追跡期間中で確認されたがん及び循環器疾患の症例数が集計されています。この集計結果において、野菜および果物の摂取量で4つのサブグループ(柑橘類、アブラナ科野菜、緑葉野菜、黄色野菜)について循環器疾患の予防効果を比較しました。
柑橘類の循環器疾患予防効果(アブラナ科野菜、緑葉野菜、黄色野菜との比較)
果物は3種類の柑橘類(みかん、その他の柑橘類(はっさく、いよかん、オレンジ)、100%オレンジジュース)と16種類のその他の果物(パパイヤ、リンゴ、柿、イチゴ、ブドウ、メロン、スイカ、桃、梨、キウイ、パイナップル、バナナ、100%リンゴジュース)で構成されており、特に柑橘類について分類した結果について報告されています。
結果として、図1に示すように、アブラナ科野菜、緑葉野菜、黄色野菜については、いずれも、摂取量と循環器疾患のリスクに相関はありませんでしたが、柑橘類についてのみ、循環器疾患のリスクとの摂取量依存的な有意な相関が認められました。
非喫煙者では果物の摂取量が多いほど循環器疾患リスクが低い
果物摂取量と循環器疾患のリスク相関について調査した結果、図2に示すように、喫煙者では相関は見られませんでしたが、非喫煙者では果物の摂取量依存的な循環器疾患リスクの低減傾向が確認されました。
これは、喫煙による酸化ストレスにより、生体中の抗酸化物質の消費が増え、栄養として食事からの摂取必要量が高まり、その結果、循環器疾患のリスクに対する野菜や果物の防御的な効果を打ち消してしまっていると考察されています。
食事摂取基準との比較
今回の研究で分類されている摂取量について解説すると、野菜と果物の合計平均値は最小(186g/日)、少(335g/日)、多(482g/日)、最多(733g/日)となっています。一方、食事摂取基準(2005年版)を満たすためには、野菜であれば1日に350gから400g、果物であれば皮を除いた量で150gから200gといわれています1)。今回の調査結果と比較すると、最多群で基準を満たしているというのが現状のようです。
参考文献
- 日本人の食事摂取基準(2005年版)の活用:山本茂・吉田克士編、第1出版、平成17年8月