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β-クリプトキサンチンとは

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β-クリプトキサンチンとは

β-クリプトキサンチンの概要

β-クリプトキサンチンはカロテノイドの1つです。構造は、β-カロテンに水酸基(OH)が1つ付いた形で、炭素と水素以外に酸素の原子を持つことから、カロテノイドの中のキサントフィルに分類されます。なお、植物内では、水酸基がエステル化されて蓄えられています。

カロテノイド>キサントフィル>β-クリプトキサンチン

β-クリプトキサンチンの構造式

β-クリプトキサンチンの構造式化学式:C40H56O、分子量:552.87

β-クリプトキサンチンの性状

  • 融点:
    169度(天然物)
  • 溶解性:
    クロロホルム、ベンゼン、ピリジンに溶けやすい。エタノール、メタノールにあまり溶けない。
  • 色調:
    結晶は、金属の光沢を持った赤色の平板状。溶液中では、濃度が低くなるにしたがい、赤~橙~黄色を呈する。

β-クリプトキサンチンの供給源

β-クリプトキサンチンは、特に温州みかんに多く含まれています。

また、温州みかんの重量当りでは、果肉(砂じょう(さのう))よりも果皮(フラベド)に多く含まれています。

学術情報「柑橘類とは」

β-クリプトキサンチン含有量が多い柑橘類

独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所ホームページhttp://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/nifts/index.html

トップ>研究成果情報>平成10年度果樹試験研究成果情報
「カンキツのβ(ベータ)-クリプトキサンチン高含有品種」

植物内では、β-カロテン、β-クリプトキサンチン、ゼアキサンチンの関係は、
①β-カロテン → β-クリプトキサンチン
②β-クリプトキサンチン → ゼアキサンチン
の反応から成り立っています。β-クリプトキサンチンが植物内にたくさん蓄えられるためには、①の反応が多く、②の反応が少ないことが条件とされ、それは遺伝上決められています。

遺伝に関連してβ-クリプトキサンチンを多く含む柑橘類の分類

独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所ホームページ(アーカイブ)http://www.naro.affrc.go.jp/archive/fruit/

トップ>研究成果情報>平成15年度果樹試験研究成果情報「カンキツにおけるβ-クリプトキサンチン生成関連遺伝子の発現特性」

トップ>研究成果情報>平成12年度果樹試験研究成果情報「カンキツ果汁中のカロテノイド集積の類型化とそのオレンジ・マンダリン群における遺伝」

β-クリプトキサンチンの歴史

カロテノイドの研究は、既に19世紀の初頭にヨーロッパにおいて始まっていました。そして、カロテノイドの生理作用に関しての研究は、1910年頃から行われて来ました。

しかし、β-クリプトキサンチンの研究は、他のカロテノイド(β-カロテン、α-カロテン、リコペン、ルテイン、アスタキサンチンなど)と比較して遅れています。

理由は、欧米にはβ-クリプトキサンチンを大量に含んで習慣的に食べられる食品がなく、ヒトでの血中濃度が比較的低かったためにあまり注目されてこなかったことと、純物質が得にくかったためと言われています。従って、近年になってから、日本において新たな研究成果が次々と発表されています。

β-クリプトキサンチンの食経験

β-クリプトキサンチンは、温州みかん、ぽんかん、パパイヤ、柿、赤ピーマンなどに多く含まれ、これらの食品はヒトによって長い間食べられてきました。また、温州みかんの産地ではシーズン中に1人が1日に平均4個以上食べることもまれではありません。従って、β-クリプトキサンチンの食経験は十分にあると言えます。

参考文献
  • 高市真一他:カロテノイド-その多様性と生理活性-. 裳華房, 2006.
  • THE MERCK INDEX 13th EDITION, 2001.
  • 五訂増補日本食品標準成分表, 2005.
  • 矢野昌充: Foods Food Ingredients J.Jpn. 212: 557~563, 2007.